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| 1.市民会館エレベーター問題とは? | ||||||||||||
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最近私のところに「市民会館にエレベータが必要なのか?」「5千万円は高すぎないか?」といった問い合わせが、なぜか集中してくるようになった。これらは尾張旭市が今年度(平成14年度)に予定している市民会館のエレベータ設置工事に関する、市民からのご意見である。 「平成14年度 愛知県尾張旭市一般会計予算書及び予算説明書」によれば、「款2 総務費」の「項1 総務管理費」の「目13 市民会館管理費」に以下の予算が計上されている。
単位は「千円」なので、 確かに工事に5千3百万円の予算が組まれている。これが「高いんじゃないか?」「1日何人使うんだ?」「保守や点検にいくらかかると思ってるんだ?」というのが、今回この件について寄せられている意見である。 |
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| ※開札結果を掲載しました(H14.12.11) |
2.エレベーター問題はここから始まった |
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この予算は平成14年第1回(3月)定例会に、第8号議案として3/4に上程され、各常任委員会に分割付託され、3/22に賛成多数で可決されている。この項目は、総務委員会の管轄のはずだが、特に委員会でエレベーターに関する質疑はなかったと聞いている。 実はこの委員会開催の前、確か3/7前後に、平成13年の市長選立候補者である水野昇氏から全議員に対して「要望書」なるものが提出されていた。この要望書は2項目からなり、2項目目は保育に関すること、1項目目がこの市民会館のエレベーターに関するものであった。そのエレベータに関する部分の内容は以下の通り(原文ママ)である。
つまりは「この2件に関して議員の間で十分審議して欲しい」との趣旨のようであり、一般質問の傍聴に訪れた氏は、各議員に「要望書の件、よろしく」と声を掛けていた。 筆者注:個人名を出していますが、この要望書が全議員に渡されており、かつ提出者の押印がありますので、正式な「文書」であるとの認識から、問題ないと判断しました。また、「標記の件につきまして、要望致します」とあり、1,2と項番を振ってそれぞれ要望内容と理由を述べられているので、普通に「要望事項が2つあるもの」と解釈し、ここでは関係のあるエレベータの件のみ抜粋しました。 |
3.なぜ市民会館にエレベーターなのか? |
では、なぜこのご時世にエレベーターを設置しなければならないのか?ということであるが、「ノーマライゼーション」「バリアフリー」が特殊な言葉・概念でなくなりつつある昨今なので、個人的には「このご時世だからこそ」と思うが、法的・施策的な根拠は以下の通りである。 愛知県は平成6年に「人にやさしい街づくりの推進に関する条例」を制定している。この条例では目的・方針を以下の通りに定めている。(目的) 第一条 この条例は、すべての県民が個人として尊重され、あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられることが街づくりにおいて極めて重要であることにかんがみ、高齢者、障害者等を含むすべての県民があらゆる施設を円滑に利用できる人にやさしい街づくりについて、県及び事業者の責務並びに県民の役割を明らかにするとともに、人にやさしい街づくりに関する施策の基本方針を定めること等により、人にやさしい街づくりの推進を図り、もって県民の福祉の増進に資することを目的とする。 (施策の基本方針) 第六条 県は、次に掲げる基本方針に基づき、人にやさしい街づくりに関する施策を実施するものとする。 一 高齢者、障害者等を含むすべての県民が円滑に利用できるよう建築物等の整備を促進すること。 二 高齢者、障害者等を含むすべての県民が自らの意思で円滑に移動できるよう道路、公共交通機関の施設等の整備を推進すること。 そして県内の市町村については以下の通りに定めている。 (市町村に対する協力) 第三条 県は、市町村が実施する当該市町村の区域の状況に応じた人にやさしい街づくりに関する施策に協力するものとする。 そしてエレベーターの設置に係わる部分は以下の通りに定められている。 (特定施設に係る措置) 第十一条 次に掲げる施設で不特定かつ多数の者が利用するものとして規則で定めるもの(以下「特定施設」という。)を設置しようとする者(以下「特定施設設置者」という。)は、出入口、通路、廊下、階段、エレベーター、便所等を高齢者、障害者その他日常生活又は社会生活に身体の機能上の制限等を受ける者が円滑に利用できるようにするための措置を講じなければならない。 一 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第二号に規定する特殊建築物(同号に規定する用途に供する部分の床面積の合計が百平方メートル以下の特殊建築物及び五十戸以下の共同住宅を除く。) 二 事務所の用に供する建築物 三 地下街その他これに類するもの 四 道路、公園、緑地その他これらに類するもの 五 公共文通機関の施設 六 駐車場 七 一団地の住宅施設その他これに類するもの 2 前項に規定する措置の基準は、別表のとおりとする。 (既存の特定施設に係る措置) 第十七条 事業者は、この章の規定の施行の際現に存する特定施設(現に工事中のものを含む。)について、第十一条第一項に規定する措置を講ずるよう努めなければならない。 別表(第十一条関係) 四 第十一条第一項第一号、第二号及び第五号に係る特定施設で規則で定めるものにあっては、規則で定めるところにより、次に定める構造のエレベーターを設けること。ただし、規則で定める構造の傾斜路を設けるときは、この限りでない。 イ かごの内のり寸法は、間口一・四メートル以上、奥行き一・三五メートル以上とすること。 ロ 出入口の有効幅員は、八十センチメートル以上とすること。 ハ 車いす使用者及び視覚障害者の利用に配慮した操作ボタン等を設けること。 この条例を受けて、尾張旭市は平成10年3月に「尾張旭市人にやさしい街づくり推進計画」を策定した。この中で市民会館については、「不特定多数の人が利用する大規模な複数階の建物には、障害者対応エレベータを設置します」とされている。 またこの推進計画を受けて平成11年3月には「尾張旭市人にやさしい街づくりモデル地区整備計画」を策定し、具体的な整備プランを示している。それによると、市民会館については「エレベータの設置に努めます」とされている。また設置予定は平成13年度となっている。 今回の予算計上は予定より1年遅れとなったが、これら条例や計画に基づくものである。 ある方から「この『人にやさしい街づくりの推進に関する条例』が制定された頃はバブル経済の末期で、今の経済状況とは大きな隔たりがある。この条例を支えに市外の業者しか施行できない工事に闇雲に税金を投入するのはいかがなものか」という趣旨のご指摘をいただいた。確かにこの条例が制定された平成6年当時は、まだ箱物行政が続いていた時代で、単価の高いバリアフリー対策の工事を行えば、大手ゼネコンとその下請けは喜んだことだろう。そういう側面からすると、こうした条例を支えにした今回の工事は、業者を喜ばせるためだけと言えるのかも知れない。私はそういう斜に構えた、物事の裏にあるものを見ようとする姿勢は大事だと思うが、果たしてこの条例はそれだけのものだったのか疑問に思い、平成14年度の愛知県の「人にやさしい街づくり連続講座」に応募したところ、幸いにも抽選に通り参加することになった。しょせん愛知県が開催しているものだからどうかな?という思いはあったが、実際に行ってみると県は場の提供に徹しており、障害者の方を含めた手作り運営であった。その中で色々な人と話す機会があったが、そこでこの講座の過去の内容などをまとめた「人にやさしい街づくり」という本を購入した。この本の著者の一人は山田昭義さんといって、AJU自立の家の常務理事であり、愛知県で長い間障害者運動に取り組んでこられた方であった。この方は自身も車いすを必要とする障害者であり、実は「人にやさしい街づくりの推進に関する条例」の制定に深く関わってこられた。その山田さんがこの本の中でこう述べられている。 私は条例制定過程に関わった一人として、今回の「愛知県人にやさしい街づくり」に一定の評価が得られるのではと自負しています。 これを読んで私は、この条例が決して建設する側からの視点だけで作られたものではないと確信した。一番重要である「障害者の視点」が欠けていないのであれば、この条例を支えにしても「闇雲に税金を投入(=無駄遣い)」との評価は当てはまらないと思う。 |
4.エレベーターは5千3百万円もするのか? |
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市民会館にエレベーターを設置する理由は3章で述べたとおりであるが、次に「5千3百万円もするのか?」という疑問がある。その積算根拠については素人の私では分からないので、担当の管財課に聞いてみた。すると、 『この5千3百万円は積算の結果ではなく、名古屋市などの同様の事業でかかった費用を調査し、工事金額を建築課などにも協力してもらって推定し、枠取り的な形で計上したものである』 とのことであった。第1章で述べたように、今回の予算計上は「設置工事」だけではなく、「設置工事設計委託」も含まれている。通常は設計を前の年度で実施し、翌年度以降に工事を実施するケースが多いが、今回は時期的な問題から同一年度で実施することとなった。「設計」を行わなければ「いくらかかるか」の積算もできないので、「設置工事」の部分は枠取り予算にならざるを得なかった、という状況である。 当然設計の結果、今回計上した予算と大きな差違があれば(プラスでもマイナスでも)補正予算で補正するとのことであった。その後入札により業者を選定し、「工事にいくらかかるか」の部分が正式に決まることとなる。また、県から1/4の補助が出るので、現在その申請書類を作成中とのことであった。現状それは予算に計上されていないが、補助が決定し次第、補正予算で計上されるはずである。 ちなみに設計の業者は既に決まったとのことで、これから設計に入るとのこと。今のところ建物の中をぶち抜くのではなく、外に増築のような形で設置することになる予定らしい。建築基準法も絡んでくるので未定だが、東側の壁が良いのではないかとのことであった。私もそれが一番すっきりすると思う。 余談だが、今回の件とは関係ない工事業者に尋ねてみると「それくらいはかかるんじゃないか」「そう間違ってはいないんじゃないか」という答えが返ってきたらしい。 |
5.利用者はあるのか? |
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もう一つ「エレベーターを一体誰が使うんだ?」という疑問があるが、特に3階のホールは意外に利用者が多く、昨年度はのべ25,000人の利用があったとのことである。もちろんこれは貸出申請書類の「利用人数」から推計したもので、多少の違いはあるかもしれないが、民謡やダンスのグループが定期的に利用しているとのことである。中には婦人会のような団体もあり、高齢者も多いとのことである。 舞台ではなくホールとしては、近隣でもなかなかこの広さのものはなく、利用率は高いらしい。ただその際にエレベーターがないのがネックとなり、アンプや太鼓など大きな機材を運ぶ必要がある場合は、二の足を踏むケースもあるという。「他が借りられなければ・・・」という団体もあるそうなので、エレベータの設置によりホールの利用率がアップするという効果が期待できるかも知れないし、エレベーター自体の使用率も言われるほど低くないだろうというのが現在のところの予想である。 また、「エレベーターを設置して欲しい」という要望は意外に多いとのことである。「昇降機でいいじゃないか」という意見もあったが、運ぶものが人だけではないこと、電動車椅子は大人3人でも上げるのが大変なこと、などを考えると今回のケースでは代用とするのは難しいのではないかと思われる。 上で引用した「人にやさしい街づくり」という本の中で、山田昭義さんは以下のようなエピソードを取り上げられている。 私たちが名古屋市交通局に、市バスにリフトつきバスの導入を要望しました。話し合いの折、担当者は「昨年一年間市バスを利用した車いすの人は二人です。その人のためにリフトは導入できませんし、不要である」と言いました。数年後、市バスに初めてリフトつきバスが導入され、一時間に一本ずつ走るようになりました。何と月三〇〇人を超す人が利用しました。障害はまさに社会が作っていたのです。 今回の件にも通じるものがあると思う。心配しなくても、エレベータがあれば使用する気になる障害者がいるはずである。 |
6.まとめ |
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「バリアフリー」にお金がかかるのは確かである。しかしだからといって、整備しなくてもいい、という訳では決してない。市民会館以外にもエレベーター未設置の施設はあるが、徐々にしか整備できないのは財政上の問題であり、それが許せばすぐにでも整備する必要があると思う。 スポーツライターの乙武氏が早稲田大学に入学した際、大学側は彼のために校舎のバリアフリー化等の整備を行ったそうである。その際学生から「たった一人のためにお金を使うのか」という意見が出たという。大変悲しい発想であり、こうした障害者の苦労・気持ちが分からない人がこれからの社会を支えていくことを考えると、少し怖い気もする。今回私に意見をいただいた方やこの学生が「バリアフリーに反対している」という意味ではない。あくまで「健常者の視点からの意見」になってはいないだろうか?ということである。「市民会館なんて使わない」というのは、使う気になればいつでも使える人の意見になってはいないだろうか?使いたくても使えない人はどうしたら良いだろうか?「リフトで十分」というのは、結果的に各階の移動が出来れば良いということであろうか?障害者の方は介助を気軽に依頼しているだろうか? インターネットで同じようなことについて述べた記事を見つけたのでご紹介しておく。 「みたか電子市民会議室」FAQ これは東京都三鷹市が市民からの問い合わせに答えているもので、この中に「三鷹台駅エレベータ設置について」という質問がある。そこではホームエレベータやホームリフトなどの実用的で安価なものをたくさん造るべきでは?という内容である。その回答の中にこんな文言がある。『ご指摘のとおり、車椅子を中心とした対応としては椅子式のリフト等もありますが、障害者の方への対応に限って考えても、障害者自身が一人で自由に移動したいという要望が強いことや、介助する人が必要になった場合の人員確保の問題もあり、一人で乗降可能なエレベーターを選択することとなりました。バリアフリーを推進し、また、「全ての人に使いやすい」という点ではユニバーサルデザインとしての視点を大切にして整備を行う予定です。』 「合理化」だけを考えれば「バリアフリー」なんて無駄以外の何者でもない。それでもお金をかけて「バリアフリー」にする理由、それは全ての人が機会均等で公共のサービスを享受できる環境を作り上げることだと思う。ある人がこんなことを言っていた。「この世には2種類の人しかいない。それは障害者か、将来障害者になる可能性のある人だ」と。健常者といえどもいつ障害者になるか分からない。だからこそ決して障害者の視点が欠けてはならないと思う。 私は今回の件では、たとえ1日1人でも助かる(階段で行けるのに階段を使わない人を除く)のであれば、設置すべきだと思った。工事費が不正に高いだとか、利用者数の見積もりが異常だとか、そういう問題でもあれば別であったが、調べたところそういうこともなかった。私の結論は 『今回の市民会館のエレベーターは必要であり、工事金額も現段階では不正に高い訳ではない』である。もちろん今後の設計・入札で安価で済むに越したことはないことは付け加えておきたい。 |
| 付録A.入札結果 | |||||||||||||||||||||||||||
| 入札日 | 平成14年9月10日 | ||||||||||||||||||||||||||
| 予定価格 | 47,113,500 | ||||||||||||||||||||||||||
| 入札書比較価格 予定価格の105分の100 | 44,870,000 | ||||||||||||||||||||||||||
| 最低制限価格 | 32,970,000 | ||||||||||||||||||||||||||
| 入札書比較価格 最低制限価格の105分の100 | 31,400,000 | ||||||||||||||||||||||||||
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| (注)詳細は必ず市の書類でご確認下さい。万一、内容に間違いがあっても責任は持てませんのでご了承下さい。この入札結果は市の総務課でどなたでも閲覧できます。業者名や所在地・連絡先も記載されております。 |
| 付録B.改版履歴 |
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平成14年 4月17日 初版公開 平成14年 4月23日 「市民会館のエレベータ設置に疑問を持っている方」=「バリアフリーに反対しているまたは理解していない人」と捉えられかねない部分について加筆・修正した 平成14年 5月 8日 「まとめ」に東京都三鷹市のFAQを追加 平成14年 8月22日 「人にやさしい街づくり連続講座」の内容と、「人にやさしい街づくり」という本の一部引用を追加 平成14年12月11日 開札結果を追加 |
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